安積山(大和物語)現代語訳

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大和物語の安積山(山の井の水)の現代語訳について。

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安積山(大和物語)現代語訳

それはおそらく、

「むかし、大納言の、むすめいとうつくしうてもちたまうたりけるを」から始まる段でしょう。
山の井に行った女が自分の変わり果てた姿を見て亡くなるお話です。


昔、大納言が大層美しい娘を持っていらっしゃった。その方を、帝にさしあげようと思ってたいせつに育てていらっしゃったが、大納言のおそば近くお仕え申し上げていた内舎人(うどねり)であった人が、どのようにして見たのだろう、この娘を見たのだった。

容姿のたいそう美しいのを見て、ほかのすべてのことを思うひまもなく、恋しく思われて、夜昼たいそう悩ましく、病気になりそうに思われたので

「ぜひ申しあげたいことがあるのです」

と、絶えずいっていた。それで女は、

「変ですね。何事でしょうか」

といって外へ出たところを、男はあらかじめ用意をしていたので、不意に抱いて、馬に乗せて陸奥(みちのく)の国へ、夜も昼も休みなく逃げていった。
安積(あさか)な郡(こおり)の安積山という所に庵をつくって、この女を置き、ときどき里に出て、いろいろな物などを求めてきて食べさせながら長い間年月暮らしていた。
ある日、この男が出かけた。女はただひとり物を食べないで山の中にいたので、このうえもなく心細く思われた。
こうしているうちにみごもってしまった。この男が物を求めに出かけてしまったまま、三、四日帰ってこなかったので、待ちこがれて外に出て、山の井に行って、姿を映してみると、自分の以前の面影でもなく見慣れぬ見苦しいようすになってしまっていたのだった。
鏡もなかったので、顔がどのようになったかも知らないでいたが、不意に見たところ、大層恐ろしいようすになっていたので、大層恥ずかしく思った。
そこで女は、

あさか山
影さへ見ゆる
山の井の
あさくは人を
思ふものかは

(安積山の姿まで映って見える山の井が浅いように、浅い心であの人を思っていたのでしょうか。そんなことはありません)

と詠んで、木に書きつけて、庵に来て死んだのだった。
男はあれこれと物などを求めて持ってきたが、女が死んでうつぶせになっていたので、

「ほんとうにおどろきあきれたこと(いとあさまし)」
と思った。山の井のそばの木に書いてあった歌を見て帰ってきて、この歌のことを思いつめて、女のかたわらに臥して死んでしまった。
これは世間に伝わる古いむかしばなしである。


大納言=朝廷で大臣クラスに次ぐ地位の人です。
内舎人=貴人に門番・護衛などとして仕えた人。貴族の所有する地方の荘園などから京都に出てきてなることも多かった。この男も、陸奥の国まで逃げたことを考えると、東北地方に土地勘のある、地方出身者だったかも知れません。
どうして見たのだろうか=内舎人のような身分の低い使用人が、主人の娘とはいえ、貴族の娘の顔かたちまでわかる状態で見る機会は、滅多になかったということです。
たいそうやるせないことだと思った=原文は「あさましい」ですが、この場合は古語辞典に載っている「意外だ」「情けない」などの直訳ではものたりない、そういう気持ちが複雑にからみあった心持ちだと思われます。

安積山(大和物語)原文

昔、大納言の娘いとうつくしうて持ちたまうたりけるを、帝に奉らむとてかしづきたまひけるを、殿に近うつかうまつりける内舎人にてありける人、いかでか見けむ、この娘を見てけり。
顔かたちのいとうつくしげなるを見て、よろづのことおぼえず、心にかかりて、夜昼いとわびしく、病になりておぼえければ、「せちに聞こえさすべきことなむある」と言ひわたりければ、「あやし。何事ぞ」と言ひて出でたりけるを、さる心まうけして、ゆくりもなくかき抱きて馬に乗せて、陸奥の国へ、夜ともいはず昼ともいはず逃げて往にけり。安積の郡安積山といふ所に庵を作りてこの女を据ゑて里に出でつつ物などは求めて来つつ食はせて、年月を経てあり経けり。この男往ぬれば、ただ一人物も食はで山中にゐたれば、限りなくわびしかりけり。かかるほどにはらみにけり。この男、物求めに出でにけるままに三、四日来ざりければ、待ちわびて立ち出でて、山の井に行きて、影を見れば、わがありしかたちにもあらず、あやしきやうになりにけり。鏡もなければ、顔のなりたらむやうも知らでありけるに、にはかに見れば、いと恐ろしげなりけるをいと恥づかしと思ひけり。さて詠みたりける、
安積山影さへ見ゆる山の井の浅くは人を思ふものかは
と詠みて木に書きつけて、庵に来て死にけり。男、物など求めて持て来て、死にて臥せりければ、いとあさましと思ひけり。山の井なりける歌を見て帰り来て、これを思い死にに、傍らに臥せりて死にけり。

まとめ:安積山(大和物語)現代語訳

大和物語の安積山(山の井の水)で歌に込められた、男に対する女の思いは「浅くも人をおもふもかは」にみられるとおり、男を深く愛していましたよ、という気持ちでしょう。

女が死んでしまったのはなぜかというと理由は旦那が帰ってこず、また自分の姿がみすぼらしくなってしまったため、捨てられた。。。と思ったからではないでしょうか。

また男が死んでしまったのは家に戻ってきたら、女が死んでいて、ショックのあまり自分も生きてはいけないと思ったのではないでしょうか。

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