もののけ姫|アシタカはなぜカヤのネックレスをサンに渡した?

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映画「もののけ姫」で、アシタカはなぜカヤからもらったネックレス(首飾り)をサンにあげたんでしょうか?

アシタカは呪いを受けて断髪し、村から追放されたのでその時点でカヤとの婚約は破棄となったからでしょうか?

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もののけ姫|アシタカはなぜカヤのネックレスをサンに渡した?

映画「もののけ姫」の中で、アシタカがカヤからもらった小刀のネックレス(首飾り)をサンに渡す場面では、「え!それあげちゃうの!?」と思った人もいるでしょう。

まず、間違えてはいけないのは、アシタカとカヤが一緒にいるわけではないということです。そのことを証明しているのが首飾りです。カヤがアシタカに首飾りを渡した時点で、お互いの関係に区切りをつけ、アシタカはカヤの気持ちを受け止めたのです。言葉ではずっと思っていると言っていますが、カヤはきっと、と言っています。カヤもアシタカをずっと想い続けることは難しいのです。カヤはまだ若い女の子であり、上の人たちもアシタカが呪いを解くことはできないと思うでしょう。それは簡単なことではありませんから。

そのため、カヤには村の人々から新しい結婚相手が与えられることになるでしょう。女性は立場が弱いですし、本人の意志とは関係なく選ばれることがあります。特に昔の話ですから、村のために尽くすことは女性にとって当たり前のことであり、カヤもそれを理解していたのだと思います。だからアシタカにも首飾りを渡した時、ただ想っていると伝えただけで待っている、とは言いませんでした。

カヤは首飾りをアシタカに渡すことで、自分の気持ちを伝えたと同じように、区切りをつけたのです。でも、アシタカには首飾りを自分のものだと思ってほしい、と言っていたのは、忘れないでほしい、生きていてほしいという最後の願いだったのでしょう。そしてアシタカも忘れないと言いました。しかし、それは叶うことはありません。お互いの道は交わることはありませんから。そして、それは誰よりも本人たちが理解していたでしょう。

そして、アシタカがサンに渡した時も同じ状況でした。アシタカはもうサンに会うことはできないけれど、それでも一緒にいたかった、という思いですね。

アシタカはサンに会うことはもうできないけれど、それでも一緒にいたかったし、思い続けたかったという気持ちが首飾りを渡すことで表現されました。この行為に対して、批判的な人もいますが、アシタカには他の方法で思いを伝える手段がありませんでした。アシタカがカヤの思いを軽視していると受け取られるかもしれませんが、実際はそうではありません。カヤもアシタカもお互いを思うことは叶わないのです。それぞれ別の道を進んでいく存在であり、アシタカはサンに首飾りを渡すことで、カヤに対しても区切りをつけたのです。同じように、アシタカはサンに対しても思いを託すために首飾りを渡したのです。

アシタカは村から追放された身ですが、物語の中では一度もアシタカの村への思いが語られていませんでした。村を離れることはどれだけつらく悲しいことか、私たちには想像できるでしょう。しかし、アシタカは一度も弱音を吐くことはありませんでした。ただ、アシタカが村を想っていなかったのではないかと言われるかもしれませんが、首飾りを持っているということから、アシタカは村への思いを持っていると思います。カヤからもらった首飾りだけでなく、村とアシタカをつなぐ唯一のものですから、アシタカが首飾りを渡したことは、村への区切りと、過去の自分を捨ててでもサンを思い続けるという表現のように感じます。

お守り|アシタカがカヤのネックレスをサンに渡した理由

カヤはアシタカに玉の小刀(ネックレス)を渡すときにこう言いますよね。
「お守りするよう息を吹きこめました」
このことから、玉の小刀はまず「お守り」としての意味があると考えることが出来ます。

玉の小刀を渡すシーンは非常に緊迫した場面です。破滅的なことが起こる予感に満ちているのに、アシタカはサンの居場所が分からない。当然、不安で心配なはずです。その状況で「お守り」渡す(正確には山犬に託す)という行為の意味は明らかですよね。
アシタカはどこにいるかわからないサンに対して「無事でいてくれ」というメッセージを送っているわけです。

サンへの思い|アシタカがカヤのネックレスをサンに渡した理由

同じく玉の小刀を渡すシーンでカヤはこうも言っています。
「いつもいつもカヤは兄さまを思っています」
玉の小刀は「思い」の象徴でもあるわけです。

このことから「カヤがアシタカを思うように、アシタカはサンを思っている」という意味を見出すことができます。簡単に言えばアシタカがサンに「好きだ」と告白しているわけです。

ただ、ここはちょっと苦い解釈も出来ます。「アシタカがカヤをふって、サンに告白した」ようにも見えてしまうわけです。「カヤがかわいそうじゃないか」と。
確かにかわいそう。でも、これは作者が意図的に「かわいそう」に描いた、あえて苦味を入れたと僕は考えています。理由は別項目に書きます。

故郷との別れ|アシタカがカヤのネックレスをサンに渡した理由

カヤから玉の小刀を渡されたアシタカは、カヤに言います。
「私はいつもカヤを思おう」
ここでアシタカはカヤへの思いを告げているわけですが、これは一方で「アシタカの決意の弱さ」も描いています。アシタカの村への未練から生まれたセリフと解釈することも出来るからです。

たとえば、もし、この時点で「二度と村へは戻らない」と決めていたなら、アシタカは小刀を受け取らないんじゃないかな。でも、実際には受け取っているし、「カヤを思う」とも言っている。そして、このシーンがあることで以後、小刀はアシタカと彼の故郷をつなぐアイテムにもなっていきます。
簡単に言い換えると「アシタカは呪いが解けた後、カヤの待つ村に戻るつもりなのだ。だから、小刀を肌身離さず持っているのだ」とも解釈できるわけです。

そんな大事なアイテムを、アシタカは山犬を通じてサンに渡します。
ここにはアシタカの決意を見出すことが出来ます。

「もう村には戻らない」

アシタカは小刀を手放すことで、故郷も手放したのです。

まとめ:もののけ姫|アシタカはなぜカヤのネックレスをサンに渡した?

ラストの場面では、サンがアシタカに対して「アシタカは好きだけど、人間を許すことはできない」と伝えます。これは、アシタカがサンに告白したことへのサンの返答です。

サンは言います。「私もあなたを好きだけど、一緒にはなれないの」

それに対して、アシタカはサンに向かって「サンは森で、私はタタラ場で暮らす。一緒に生きよう」と言います。そして、サンはその提案を受け入れます。

「タタラ場で暮らす」ということは、同時にアシタカが故郷を捨てるということも意味しています。

つまり、アシタカはカヤを象徴する故郷を捨て、結ばれることのない運命にあるサンと共に生きることを決意したのです。そして、アシタカもサンもカヤも、それぞれが思う人とは一緒になれないのです。

そう、実は「もののけ姫」は悲しい恋物語でもあるのです。だから、カヤがかわいそうなのは意図的な演出であり、サンとアシタカも同じようにかわいそうに描かれています。というか、「近くにいるのに、お互いが好きなのに、結ばれることはない」というアシタカとサンの関係は、ある意味でカヤよりもかわいそうかもしれませんね。

あとがき:もののけ姫のモデル|アシタカはなぜカヤのネックレスをサンに渡した?

映画「もののけ姫」には、モデルとなった場所や神様が存在します。実際のモデルは、島根県の熊野大社とその周辺に祭られている神様です。

アシタカのモデルは、阿遅志貴高日子根神(ジキネを外すとアシタカヒコになります)という神様です。そして、アシタカが持っているネックレスは、彼自身を象徴しています。カヤのモデルは、下照姫という神様で、実際の婚約者は天若彦という神様でした。天若彦と阿遅志貴高日子根神は同一視されていて、前者が死者を、後者が生者を表しています。アシタカはこの2つを合わせた存在で、生と死の狭間に立っているという設定なのです。また、彼らは兄妹でありながら婚約者でもあるという設定があります。

「弟棚機の胸元を飾るミスマルの玉の神、阿遅志貴高日子根神ぞ」という歌が、カヤ(下照姫)がアシタカ(阿遅志貴高日子根神)を指すものです。ここでいう「弟棚機」は七夕の織姫を指し、同時に阿遅志貴高日子根神の母である多紀理比売命を指しています。そして、「胸元を飾るミスマルの玉」とは、ネックレスが阿遅志貴高日子根神(アシタカ)自身を指すことを意味します。

また、阿遅志貴高日子根神の妻である天御梶日女がサンのモデルです。ネックレスを託すという行為は、自分自身を相手に託すという意味になりますので、プロポーズに似ていますね。

ちなみに、「もののけ姫」と「千と千尋の神隠し」は神話的に繋がっており、アシタカの母親である豊玉姫命(八尋和邇)が千尋のモデルの多紀理比売命と同じ神様となっています。

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